内容
青く美しい羽にずんぐりとしたユニークな体型、鮮やかな採食行動で多くの人に愛されるカワセミ。本書では、カワセミ(類)の基本的な生態、子育て、食事情、渡りについて、わかりやすく紹介するとともに、カワセミが暮らしている水辺の“ご近所さん”である鳥たち、魚たち、そして水辺(河川)環境の変遷やこれからの川づくりについても丁寧に解説。
カワセミのことはもちろん、「カワセミたちが暮らし続けられる河川環境」にも思いを巡らすことのできる一冊。
【本書のポイント】
●日本ならびに世界に分布する亜種の紹介から、基本的な生態、採食行動、子育て、渡りなど、カワセミに関する幅広い知識を解説。
●ダイナミックな採食行動や、カワセミの食物となる魚や生き物についても紹介。
●カワセミと同じように河川で暮らす鳥たちの暮らしについて、河川生態系を担う一員という視点で詳しく説明。
●カワセミたちが暮らす河川に変化を与える要因、そして、これからの日本の河川整備の方向性についてもわかりやすく解説。
●「採食行動、待ち伏せとホバリングの成功率は?」「親鳥はヒナにどんなエサをどのくらい与えている?」「1,000km以上移動する個体は全体の何%?」などといった素朴なギモンを世界中の文献データをもとに解説。
目次
口絵はじめに
第1章 カワセミ(類)の基礎知識
カワセミは身近な鳥?
カワセミの身体と基本的な生態
全長と体重/羽の色/換羽/目/くちばし/足指(または趾)/声/基本的な生態/年間の生活/カワセミの生物分類学的階級
日本で見られる(見られた)カワセミの仲間
世界に分布するカワセミの仲間
カワセミ亜科/ヤマセミ亜科/ショウビン亜科
カワセミの進化
豆知識 カワセミの色や形 ~発色や形態、バイオミメティクス~
第2章 カワセミの繁殖
つがい(夫婦)で協力、繁殖の季節
調査地は千曲川の中流域
カワセミの巣
巣穴掘り/河川の崖に巣をつくる鳥
求愛給餌
卵と抱卵
捕食者
カワセミ同士の争い
なわばりの大きさと巣間距離
育雛
ヒナの巣立ち/繁殖期の長さ/巣穴の複数回利用/子育てを手伝う「ヘルパー」
カワセミ こぼればなし1 カワセミの産座 98
第3章 カワセミの採食行動と食物
かわいらしい姿とのギャップ? 鮮やかな採食行動
2つの採食行動
待ち伏せ/ホバリング(停空飛翔)
採食場所を突きとめる
色を使って個体を見分ける/色に影響されるオスのモテ具合
親鳥がヒナに運ぶ食物を調べる
巣の中の手がかり/ビデオカメラで映す
何を食べてヒナは育つ?
魚の大きさと形/巣立ちまでにヒナが食べる魚の量
カワセミの水浴び
カワセミ こぼればなし2 再びペリット
第4章 カワセミの旅
移動するカワセミ、しないカワセミ
鳥の「移動」
鳥類標識調査
日本でのカワセミの移動記録
北欧、東欧で繁殖するカワセミは渡り、地中海周辺では定住する
親から独り立ちをした後は、旅へ
長距離移動記録/海を渡るカワセミ/冬のカワセミ
GPSを使った小鳥の追跡
カワセミの寿命
カワセミ こぼればなし3 隣のつがいの巣を見に来たカワセミ
第5章 カワセミと一緒に河川にすむ鳥たちと増水
河川生態系と生き物のつながり
河川の陸域にすむ鳥
砂礫地では足元の巣にご注意!/初夏のヨシ原を賑わせる大きな声/河川周辺の草地や林にすむ鳥たち
水辺で魚を狙う鳥たち
魚を釣る鳥がいる?/水や泥を揺らす脚技/脅威の捕食者/益鳥でもあり害鳥でもある/猛禽のなかでも魚好き
ヤマセミ
ヤマセミに出会う機会が少ないワケ/営巣環境の違い/食物の違い/採食環境の違い/ヤマセミのホバリング/カワセミとヤマセミの関係性/都会ではすみづらい
釣り人とヤマセミ
巣穴に戻れない/緊張の巣立ち/気づかなければいないのと一緒?/ヤマセミが身近な鳥だった過去
河川の鳥たちと増水
河川環境を維持する増水/増水の発生時期と鳥たちの繁殖/増水と繁殖中のカワセミ
カワセミ こぼればなし4 河畔林の小径で採食するカワセミ
第6章 環境の変化、鳥たちの変化
感じる時の流れ
姿を消す鳥
ササゴイとヤマセミ/都市でのカワセミの消失と復活
鳥の増減─その傾向は地域か全国か
外来生物の影響
厄介なコクチバス/外来植物
気候変動
豪雨が増えると
プラスチックごみ問題
マイクロプラスチック/カワセミのペリットからマイクロプラスチック
カワセミ こぼればなし5 カワセミと水質
第7章 生き物に配慮した川づくり
研究分野としては比較的新しい? 河川の生き物
河川からの恩恵と災害
河川における治水の歴史
普及した生物多様性という概念
新たな川づくり
「その川らしさ」を千曲川で考える
かつての千曲川、現在の千曲川/河道掘削と増水の違い/増水の力を借りた河川の自然再生と維持
生き物同士のつながり、河川間、環境間のつながり
河川の生き物と人とのつきあい方
おわりに
カワセミ こぼればなし6 カワセミは漁業に影響を与えるか
引用および参考文献
監修を終えて
写真・イラスト提供者一覧
著:笠原 里恵
監修:森本 元
四六判 328頁
ISBN978-4-89531-884-6
2023年4月発行
定価:本体2,200円(税別)
監修:森本 元
四六判 328頁
ISBN978-4-89531-884-6
2023年4月発行
定価:本体2,200円(税別)